コルチッサ・イ・ヴィーニョ(Cortica E Vinho)
ブランド名の「コルチッサ・イ・ヴィーニョ(Cortica E Vinho)」は、ポルトガル語で、「コルクとワイン」という意味。ワインをこよなく愛する人たちが、ワインと暮らす、をコンセプトにした新しいライフスタイルブランドだ。
商品ラインナップCamembert/カマンベール
Budo/ブドウ
●コルクを使い続けても大丈夫?
まずはコルクについて。芳醇なワインの打栓には、気密性、耐酸性、弾力性、復元性、そのどれをとっても、やはりコルクが一番優れているといえる。ただ、それだけではない。見事な手さばきで抜栓された瞬間、永い眠りから覚め、ワインの染みついたコルクから漂う香り。それは、人々の視覚や嗅覚へも訴えかけてくる。再び外気に触れたワインは、生き物のように息を吹き返し始める。そのオーガニックな変容が、人々をどれほど豊かな時間へと誘い魅了するだろうか。冒険の末に巡り合った宝箱を開けたときのようなワクワク感。他のものでは到底代替することができない、とても価値あるひと時となる。
コルクがワインに打たれた歴史は、400年以上前に遡る。樽で飲まれていた時代から、ガラス瓶が登場したのと時をほぼ同じくして誕生し、ワインという魅惑の葡萄酒は、瞬く間に世界中へと広がった。かの織田信長公もフランシスコ・ザビエルによってポルトガルからもたらされたワインを嗜んでいたのは周知の事実だろう。そのコルクは天然素材が故に、確かに限りある資源でもある。今や世界中で良質なワインが醸造されているが、実は市場にあるコルクの70%以上がポルトガル産だ。コルクは、樫の木の仲間で生命力が強く、樹齢250年以上のものも数多く存在する。
一時期、コルクの採取が環境破壊に繋がるとして、ヨーロッパで不買運動にも発展しかけたが、これは事実と異なる。なぜなら、コルクの原料は、伐採ではなく樹皮をはぐことで採取し、これを9~12年周期で順に行うからだ。つまり、どれほどコルクが使われたとしても、コルク樫の森が痩せてなくなることはない。むしろ、再生を繰り返している。
当然、使用後のコルクは廃棄されるのだが、実は東京都内のレストランだけでも、およそ1億5千本という数のワインが年間に消費されている。
そこで、ふと思った。
(コルクって、これでもう役目は終わりなのだろうか。。。)
●ワインで生地が染まるのか
さて、使われている生地にも目を向けてみよう。
コルチッサ・イ・ヴィーニョで使う生地は、上質なリネン100%だが、実は細糸の麻を紡ぐ際の残糸を再利用して織られている。そのため、ネップと呼ばれる、繊維が絡み合ってできた節(糸のかたまり)があり、生地自体の表情は決して均一ではなく不揃いだ。そして、染色には、長野県塩尻産メルローワインの製造過程で発酵させた後の、廃棄されるブドウを使用する。これは「のこり染め」という特殊な染色加工技術で、不思議なことにポリエステルなど人工的な糸では染まらない。よって、風合いはとても自然味に溢れ、深みのある上質なパープルの発色に染め上げられている。
●自分だけではなく、自分以外にとっても意味のあるもの
しかしながら、こういった素材を活かしたコルチッサイヴィーニョは、そうは言っても、いわゆる環境保護を謳ったブランドになりたいのではない。世間では脱炭素社会実現やSDGsなど、地球環境と人々がどう暮らすかがよく取り沙汰される。それはそれで、大切なことであるが、今の世の中は、モノづくりに対する考え方に大きな変化が起こっている。このブランドが、偏った情報が流布していたり、工業化やAI化が進んだりする中で、モノづくりの在り方や価値について、改めて見直していくきっかけになれればという思いを込める。一つのプロダクト(副資材もそう)に、どれだけ多くの人たちが携わり、どれだけ多くの人たちの生活を支えているのか。
「役割を終えたもの」をゴミや廃棄物と称されるが、果たして本当にそうなのだろうか、ということを考えるようになった。そう決めているのは人間である。であれば、そう思わないのも、また人間だ。そこに意志を持ちたい。
とはいえ、「あ、実はこれ、こうなんだ。」という、いわば酒の肴。コルチッサ・イ・ヴィーニョはそんな存在でいい。強いていえば、カーボンオフセットか。こんな蘊蓄(うんちく)を聞いて、「へぇ、そうなんだ。いいね。」くらいでグラスを開け、また別のワインのコルクを抜いたら、仲間たちと「サルーッ!」と乾杯をしてほしい。
今回、ご協力いただいたのは、KURAKIN(クラキン)さんと、Tokyo Cork Project(トウキョウコルクプロジェクト)さん。そして、まくらのキタムラが商品開発・販売を担う新しい取り組み。どうぞご期待を。
最後に余談を。
ニューヨークへ営業に行ったとき、塩尻の赤ワインを土産に持ってはせ参じたのだが、空港から出て怪しい気配に気づいたら、、、、
ワインで生地が染まるか?だが、結論としては、染まるが、きれいに染めるには染屋に頼むのがよい。
北村圭介